02-01 水塊の密度

 皆様は、お風呂に入ったことありますよね。

 お風呂に入った際に、表面が熱くて下が冷たかったなんて経験ありませんか?こんな体験が、水の密度を考える時に役立ちます。

 真水の密度が水温に依存していることによります。水温が高い水は密度が軽く、水温が低い水は密度が重いということです。水は、周囲の密度よりも重ければ下へ、軽ければ上へ移動します。

 これが密度流と呼ばれる対流です。こうして、水塊全体が攪拌され密度が安定するまで対流が進みます。

 お風呂に入った際に、表面が熱くて下が冷たかったなんて経験。これは、下に密度が重い冷たい水が、上に密度が軽い温かい水があることで安定した状態になっていることを示しています。

図-1 真水における密度のイメージ

■真水の密度

 真水の密度を考えてみましょう。

 答えから言いますと、真水の最大密度は4℃と言われています。

 つまり、真水は、水温が4℃より高くても、低くても密度は軽くなります。上の層と下の層で密度の差が大きくなるとバランスを取ろうと水が動き始めます。これが対流です。

 池や川の水が全て凍らないのは、このためです。4℃では水は凍りませんよね。

図-2 真水の密度

 先ほどのお風呂のように、暖かい水は密度が軽いですから上層に、冷たい水は密度が重たいですから下層に位置して安定します。この安定状態を「成層状態」と言います。この成層状態になるまで対流が生じます。

■海水の密度

 海水ってしょっぱいですよね。この塩辛さが重要なんです。

 海水中には、いろいろなイオンが溶け込んでいます。

 これを総じて「塩分(えんぶん)」と言います。塩分は、海水に溶け込んでいますが、よりたくさん溶け込んでいれば塩分は高く濃くなります。逆に少なく溶け込んでいれば塩分は低く薄くなります。

 よく「甘い海水」なんて言われますが、これは、塩分が低いことを示しています。

図-3 海水の密度のイメージ

 先ほど真水の密度の話をしましたが、海水では、水温と塩分の2つの項目を同時に考えなくてはいけません。そこでわかりやすい図がTSダイヤグラムです。
 縦軸に水温、横軸に塩分をプロットします。
 水温は高いほど密度は軽く、低いほど重かったですよね。塩分が高いほど重く、低いほど軽いことを学びました。
 グラフで見てみると...密度との関係がわかると思います。

図-4 海水のTSダイヤグラム

図-5 密度差による成層状態

■対流

 海水は、水温と塩分で密度が異なることを学びましたね。
密度が異なるとどんなことが起こるのでしょうか?

密度が重たい海水は下へ向かって安定、密度が軽い海水は上へ向かって安定する性質を持ちます。これが連鎖的に起こる現象を対流って言います。

図-6 密度差による海水の移動

■海水の密度計算

      ρ(S,T,p)=ρ(S,T,0)/{1-p/K(S,T,p)}
      ρ(S,T,0)=ρw+S(0.824493 + (-4.0899×10-3)T + (7.6438×10-5)T2
                   + (-8.2467×10-7)T3 + (5.3875×10-9)T4 )
                   + S1.5(-5.72466×10-3 + (1.0227×10-4)T
                   + (-1.6546×10-6)T2) + S2(4.8314×10-4)
    
    ρw = 999.842594 + (6.793952×10-2)T – 9.095290×10-3)T2
                 + (1.001685×10-4)T3 – (1.120083×10-6)T4
                 + (6.536332×10-9)T5
       K(S,T,p) = K(S,T,0) + p(3.239908 + (1.43713×10-3)T
                 + (1.16092×10-4)T2 + (-5.77905×10-7)T3)
                 + pS((2.2838×10-3) + (-1.0981×10-5)T
                 + (-1.6078×10-6)T2) + pS1.5(1.91075×10-4)
                 + p2((8.50935×10-5) + (-6.12293×10-6)T
                 + (5.2787×10-8)T2) + p2S((-9.9348×10-7)
                 +(2.0816×10-8)T + (9.1697×10-10)T2)

       K(S,T,0) = Kw + S(54.6746-0.603459T + (1.09987×10-2)T2
              + (-6.1670×10-5)T3) + S1.5(7.944×10-2
               + (1.6483×10-2)T + (-5.3009×10-4)T2)

       Kw = 19652.21 + 148.4206T + (-2.327105)T2
              + (1.360477×10-2)T3 + (-5.155288×10-5)T4
 春から夏、初秋にかけて水温は昇温期になります。温められ気温の上昇と共に海水が温められます。逆に秋から冬にかけて水温は冷却期になります。気温の低下と共に海水温が冷やされます。

 この2つの時期で密度差が生じますから、対流が促進されます。
海氷を考える時、この対流が大切な現象になります。
参考文献)
 ・海洋観測指針(気象庁)
 ・白い海、凍る海―オホーツク海のふしぎ,青田 昌秋,1993,東海大学出版会

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