■白い悪魔
流氷に覆われる1月から3月までは、漁船が港に上げられ漁が出来ない時期となります。働く場が奪われてしまう漁師さんからすれば、「流氷」は、厄介者でしかありませんでした。 また、流氷が来る直前まで漁が行われる底引き船は、しばしば流氷に閉じ込められる事案が発生しましt。「流氷海難」です。 紋別が流氷研究の拠点だった時代は、そんな流氷を知り、流氷海難を回避することが課題となっていました。気象庁、海上保安庁、北海道大学は、流氷の動向を把握し、流氷の物理的特性を把握していました。
写真-1 陸揚げされた漁船
■流氷研究の拠点(北海道大学)
北海道大学低温科学研究所付属流氷研究施設は、流氷研究の最前線基地でした。 流氷を観光で利用したり、流氷が来る海が海を育て恵みをもたらすことを教えてくれたり、この地域が流氷の恩恵を受けながらたくましく生き抜いていこうと言う思考になれたのは、この研究施設の施設長であった青田昌秋氏の功績が影響が大きいです。 オホーツクタワーに行く途中のクリオネプロムナードに設置されたテラス。実は、北海道大学の流氷レーダー「枝幸局」「紋別局」「網走局」を模していたのに気づいてましたか?! この地が流氷観測・研究の最前線であったことを知る人が少なくなってきました。
写真-2 流氷レーダーを模したテラス
■海岸の磯掃除
岩礁域にはコンブ以外の海藻も繁茂し、2,3年で枯死流失するコンブ類にとっては、着生基質である岩礁表面に多年の海藻類や石灰藻類が着生している とコンブの種である遊走子(ゆうそうし)が着生できない状態となります。 流氷が接岸し、離接岸を繰り返すことで磯の掃除をしてくれます。流氷が来な い海域では、多額の経費をかけて人為的に磯掃除をしてます。
図-1 流氷が接岸する効果
■天然の防波堤
流氷は、浮かぶ天然の防波堤の役割を果たしてくれます。流氷に覆われた海では、風による風浪が抑えられたり、白波が立つような高波浪をうねりに変えたりして波を抑える効果があります。 これにより、沿岸ではいくつもの良い効果があります。
図-2 天然の防波堤イメージ
①護岸の保護 波浪は、浅い海で砕け強大な波力が護岸を痛めたり、海岸線を侵食したりします。流氷が接岸すると海が静かになりますから護岸や海岸線を守る役割を果たしています。 実は流氷公園の海側は、海岸浸食が激しく、波浪の影響を大きく受ける海域です。消波ブロックや護岸により海岸線が保全される工事が行われています。
写真-3 波浪から陸を守る護岸工事
②塩害の低減 高波浪が減少すると砕波が減りますから、波しぶきが微小な粒子になって沿岸に広がることが少なくなります。それらにより、塩害の減少がみられます。塩分は、牧草にミネラルを供給する良い面もありますが、コンクリートや鉄材を腐食させる悪い影響もあります。
③海底への栄養分補給 静かな海では、浮遊懸濁物質が少なくなる傾向があります。これにより、浮遊懸濁物質が沈降して海底で生息するエビやカニ、ホタテと言った魚介類類の餌となるプランクトンが海底に多く供給されることになります。