01 海氷とは

01-01 海氷と流氷

海洋に存在する氷

 一般に「海氷」と「流氷」は、厳密に区別されていないのが現状です。

 当ホームページでは、以下のように分類したいと考えています。

図-1 海氷の分類

 海洋観測指針(気象庁)には、「流氷と定着氷大別される」と言う記述があります。また、「日本近海における海氷および流氷について」(林猛雄)では、海上の氷が「海氷」、「河氷」、「氷山」であると記述されています。

 そこで、私なりに整理してみました。
 海氷情報センターのホームページには、日本における海氷用語についての記述があり、「1970年に世界気象機構(WMO)によって刊行された流氷用語集に拠っています(気象庁海氷用語 測候時報第42巻第7号別冊(昭和50年7月)及び気象庁海洋観測指針)と記述されています。

 海にある氷について「流氷」と表現することが慣例的に多いようです。気象用語としては、下表また後述の通り、「海氷」は海に浮かぶ氷の総称で海水が凍結したもの、「流氷」は海氷のうち海を流れ漂い海岸に定着していないものを示しています。

 当ホームページでは、海洋観測指針に従うとともに、海上保安庁 第一管区海上保安本部「海氷情報センター」のホームページを参考にしております。

表-1 海氷用語

用語 説明
海氷
Sea ice
海に浮かぶ氷の総称。ただし、国際的には海水が凍結したものを海氷と分類し、氷山など淡水由来の氷と区別することもある。
流氷
Drift ice
海氷のうち、海を流れ漂い、海岸に定着していないもの。ただし、国際的にはこのうち海水が凍結したものだけを流氷とすることもある。
定着氷
Fast ice
海岸に接して定着している氷。定着氷はその場の海水が凍結するか、流氷が海岸に固着して形成される。
新成氷
New ice
結氷により新しく生成された氷。
密接度
Concentration
氷に覆われている海面の占める割合。10分位法で表す。
海氷域
Sea ice extent
海氷のある海域で、密接度は1/10以上。
開放水面
Open water
航行可能な広い海域で、その中に海氷があっても密接度は1/10未満。
水路
Lead
海氷域の中で、船舶等の航行が可能な割れ目や狭い通路。
全氷量
Total amount of sea ice in sight
観測地点における全海域(港内を含める)に対して、海氷の占める割合。10分位法で表す。
流氷量
Amount of drift ice in sight
視界内の全海域から港内を除いた海域に対して、流氷の占める割合。10分位法で表す。流氷があってもその量が1に満たない場合は「0+」で表し、ほとんどの海域が流氷で覆われていてわずかに隙間がある場合には「10-」で表す。
流氷初日
First date of drift ice in sight
視界外の海域から漂流してきた流氷が視界内の海面で初めて見られた日。
流氷終日
Last date of drift ice in sight

視界内の海面で流氷が見られた最後の日。

(注)流氷の動向をしばらく見る必要があるため、確定までに日数がかかる。

流氷期間
Period between first date and last date of drift ice in sight
流氷初日から流氷終日までの期間。
流氷日数
Number of days of drift ice in sight
流氷期間中に視界内に流氷が観測された日数。
流氷接岸初日
First date of drift ice on shore
流氷が接岸、または定着氷と接着して沿岸水路が無くなり、船舶が航行できなくなった最初の日。
海明け
First date of shore lead appearance
全氷量が5以下になり、かつ沿岸水路ができて船舶の航行が可能になった最初の日。 (注)流氷の動向をしばらく見る必要があるため、確定までに日数がかかる。

■氷山

 氷山は?!そう、南氷洋に漂う大きな氷ですが、長年降り積もった雪が押し固
められて出来た棚氷が陸地から分離して海を漂っている氷の総称です。
 
 棚氷(たなごおり)は、陸上の氷河(ひょうが)または氷床(ひょうしょう)
が海に押し出され、陸上から連結して洋上にある氷を指します。 
その上面は多くの場合、平坦な形状となっています。
海上自衛隊フェイスブックより

図ー2 南極の氷山

■港内結氷

 港の静穏な海面が凍ってできた氷です。平坦で大きな氷盤になることが多いです。

図ー3 港内結氷

■定着氷

 海岸に接して形成された、定着している海氷を言います。その場の海水が凍 結するか、流氷が海岸に凍結して形成されます。

 沖で圏外から来る流氷は、重なり合い、競り合いゴツゴツして荒々しい風貌ですが、定着氷は比較的な平らでその場の海水が凍って出来た場合が多いです。

図ー4 沿岸の定着氷

■流氷丘

 氷板同士が互いにぶつかり合い、押し上げられてできる氷の丘を言います。

 写真は、2014年2月にオムサロ海岸で撮影したものです。中央にある平らな氷が沿岸定着氷で、沿岸の海が凍って出来た流氷です。その沖側にあるのが流氷本体です。いわゆる外来氷です。

 北寄りの風で沖からの流氷が岸に押し寄せ、沿岸定着氷を海岸線に追いやります。行き場を失った沿岸定着氷は、海岸線に次々折り重なるように押し上げられます。
 これが流氷丘(りゅうひょうきゅう)です。さらに高く折り重なった流氷は「流氷山脈」と呼ばれたりします。

 山脈状に連なる氷丘は「氷丘脈(ひょうきゅうみゃく)」と呼ばれます。

図ー5 流氷丘

01-02 海氷の名前

 海氷は、海水が結氷温度に達すると生まれます。このホームページでは、「海氷」として統一して表記しています。海氷は、その成長過程や形状、浮氷形態によって名前がつけられています。
 ここでは、海上保安庁の「海氷情報センター」のホームページを参考に筆者が撮影した映像を併記して紹介いたします。

■発達過程による名前(新生氷)

表-1 発達過程による名前(1)

 
 写真および動画  項目  内容
       名称  新生氷
 読み  しんせいひょう
 英名  New ice
 記号  N
 氷厚  5cm未満
 解説  流氷の赤ちゃん。
新しくできた氷に対する総称です。
晶氷、グリース・アイス、雪泥、スポンジ氷などが含まれます。
 名称  晶氷
 読み  しょうひょう
 英名  Frazil ice
 記号  Cr
 氷厚  数センチ
 解説   海水中を浮遊する微細な針状あるいは板状の氷を言います。
 海水は、塩分があるため、氷点降下(ひょうてんこうか)で結氷温度が-1.8℃程です。
 紋別港周辺では、河川水の影響を受けているため、経験値で-1.8℃で凍ります。
 海水の場合は、全層が結氷温度になると凍りますから、水中でも氷の結晶が生まれます。
 「水中のダイヤモンドダスト」と呼ばれています。
 名称  グリース・アイス
 読み  ぐりーすあいす
 英名  Grease ice
 記号  Gr
 氷厚  5cm未満
 解説   晶氷より後の凍結段階です。
 晶氷は、軽いので水面に浮かび上がり、互いに集まってスープ状の層を作っています。
 シャーベット状の氷が一面を覆うようになります。光をあまり反射しないので、海面はにぶく見えます。
 名称  雪泥
 読み  せつでい
 英名  Slush
 記号   Sl
 氷厚  層厚10㎝を超える場合もある
 解説   氷の上で水を十分含んだ雪、または豪雪の後の水中のネバネバした浮遊する雪のかたまりが層を作ることがあります。
       名称  スポンジ氷
 読み  すぽんじこおり
 英名  Shuga
 記号  Sg
 氷厚  10㎝くらいのボール状の氷塊
 解説  直径数cmの海綿状の白い氷の集合体です。
 グリース・アイス、雪泥、時には、いかり氷が海面に浮上してできます。
 あまり見かけることがないので、見られたら超ラッキーです。

 

発達過程による名前(ニラス~1年氷)

表-2 発達過程による名前(2)

 
 写真および動画  項目  内容
 名称  暗いニラス
 読み  くらいにらす
 英名  Dark nilas 
 記号  Nd
 氷厚 氷の厚さが5cm以下の非常に薄い氷です。
 解説 海面が透けて見えているので暗く見えます。
 名称  明るいニラス
 読み  あかるいにらす
 英名  Light nilas
 記号  Nl
 氷厚 5cm未満
 解説  氷の厚さが5cmより厚い氷です。
白濁したり、白く見えます。
 名称 氷殻
 読み  ひょうかく
 英名   Ice rind
 記号  R
 氷厚  約5cm
 解説  穏やかな海面で直接結氷するか、またはグリース・アイスから形成されるもろくて輝いた表面が比較的かたい氷です。
 通常塩分の少ない水にできる。風やうねりによってたやすく割れ、よく矩形の氷片になります。

 名称  はす葉氷
 読み  はすはこおり
 英名  Pancake ice
 記号  P
 氷厚 約10cm前後
 解説 当団体が実施する目視観察では、この状態以降の海氷を「海氷分布」に反省させています。
 海氷同士が互いにぶつかり合って縁がまくれ上がったほぼ円形の氷塊です。
 直径30cm~3m、グリース・アイス、雪泥、スポンジ氷などから弱いうねりでつくられたり、氷殻やニラスがこわれたり、波やうねりの激しい時は薄い板状軟氷が壊れたりしてできます。それはまた、しばしばある深さで、物理的性質の異なった水塊間の境界面でできて表面に浮いてくることがあり、急速に広い海面を覆います。 

 名称  板状軟氷
 読み  ばんじょうなんぴょう
 英名  Young ice
 記号  Y
 氷厚  ニラスから一年氷への移行の段階としての海氷です。氷の厚さは、10~30cmの氷となります。
 成長の度合いに応じて「薄い板状軟氷」と「厚い板状軟氷」に分けられます。
 解説 ●薄い板状軟氷
[Grey ice](Y1)

 厚さ10~15cm の板状軟氷で、灰色を呈し、ニラスより弾力がなく、うねりによって破壊される。普通圧力によって積み重なる。
●厚い板状軟氷
[Grey-white ice](Y2)

 厚さ15~30cmの板状軟氷で、灰白色を呈し、圧力によって積み重なるよりも隆起状になります。

 名称  一年氷
 読み  いちねんごおり
 英名  First-year ice
 記号  W
 氷厚  30cm~2m
●薄い一年氷
[Thin first-year ice] (W0)
 

 ※白い氷[White ice]と呼ばれることもあるります。厚さ30~70cmの一年氷。
●並の一年氷
[Medium first-year ice] (W1)

 
厚さ70~120cmの一年氷。  
●厚い一年氷
[Thick first-year ice] (W2)

 厚さ120cmをこえる一年氷。
 解説   板状軟氷(ばんじょうなんぴょう)から成長し厚さを増した海氷です。
 いわゆる外来氷で、目視県外から流入する海氷は、重なり合い、一年氷の状態で沿岸にやってきます。
 厚さで「薄い一年氷」、「並みの一年氷」、「厚い一年氷」に分類されます。

 

浮氷の形態による名前

表-3 浮氷の形態による名前

 
 写真および動画  項目  内容
 名称 定着氷
 読み ていちゃくひょう
 英名 Fast ice
 記号  
 氷厚  
 解説  海岸に接して形成された定着している海氷で、その場の海水が凍結するか、流氷が海岸に固着して形成される。水位の変化で垂直な上下動が見られる。
 名称 初期沿岸氷
 読み しょきえんがんひょう
 英名 Young coastal ice
 記号  
 氷厚  
 解説  
   名称 氷脚
 読み ひょうきゃく
 英名 Icefoot
 記号  
 氷厚  
 解説  海岸に沿って固着した狭く長い氷で、潮汐によって動かされることもなく、定着氷が動き去った後も残っている部分。
   名称 いかり氷
 読み いかりごおり
 英名 Anchor ice
 記号  
 氷厚  
 解説  氷の生成の過程に無関係に、海底に接触または固着している水中の氷
 名称 座礁氷
 読み ざしょうひょう
 英名 Grounded ice
 記号  
 氷厚  
 解説  浅瀬に乗り上げた浮氷。
 名称 氷盤
 読み ひょうばん
 英名 Floe
 記号 F
 氷厚  
 解説  直径が20m以上の比較的平らな海氷塊で、広さによって次のように分類される。
   名称 巨大氷盤
 読み きょだいひょうばん
 英名 Giant
 記号 Fg
 氷厚  
 解説   直径10km以上。
       名称 巨氷盤
 読み きょひょうばん
 英名 Vast
 記号 Fv
 氷厚  
 解説   直径2~10km。
 名称 大氷盤
 読み だいひょうばん
 英名 Big
 記号 Fb
 氷厚  
 解説   直径500m~2km。
 名称 中氷盤
 読み ちゅうひょうばん
 英名 Medium
 記号 Fm
 氷厚  
 解説   直径100~500m。
 名称 小氷盤
 読み しょうひょうばん
 英名 Small
 記号 Fs
 氷厚  
 解説  直径20~100m。 
 名称 板氷
 読み いたこおり
 英名 Ice cake
 記号 Ck
 氷厚  
 解説   直径が20mより小さい比較的平坦な海氷。
 名称 小板氷
 読み しょういたごおり
 英名 Small ice cake
 記号 Cs
 氷厚  
 解説   直径が2mより小さい板氷。
 名称 大氷岩
 読み だいひょうがん
 英名 Floeberg
 記号 Fl
 氷厚  
 解説   一つの氷丘またはいくつかの氷丘が凍りついてできた大きな海氷塊で、周囲の海氷とかけ離れている。海面上5m以下の高さで浮いている。
 名称 砕け氷
 読み くだけごおり
 英名 Brash ice
 記号 Br
 氷厚  
 解説   直径2m以下の氷片で、様々な形に砕けた浮氷の集まっているもの。
参考文献)
 ・海氷情報センターHP「海氷用語の解説」 [ こちら ]
 ・気象庁HP「海氷用語の説明」 [ こちら ]
 ・海洋観測指針(気象庁)
 ・日本近海における海氷および流氷について,林猛雄,明星大学研究紀要. 理工学部(15),173-180,1979-03 [ こちら ]
 

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