流氷は、オホーツク海沿岸の住民にとって「招かれざる客」として見られていた時代があり、厄介ものでした。 しかし、流氷は地球環境や生物の生産活動等に大きな影響を与えていることが解明され、この流氷を新たな資金源としてとらえ、世界の氷海域研究のメッカとして、まちづくりのプロジェクト「流氷研究国際都市構想」が紋別市において打ち出されました。
北海道大学流氷研究施設
北海道大学は、1941年に低温科学研究所を設立し、海洋部門を中心に海氷の物理的性質研究のための室内実験、野外観測を開始しました。 流氷研究施設は、1965年4月、海氷研究の進展にともなう野外観測充実のため、同研究所の附属臨海研究施設として紋別市に設立されました。 世界初となる流氷観測レーダーは、3年を要して紋別、網走、枝幸の3ヵ所に設置され、紋別市の研究施設から遠隔制御されていました。観測範囲はオホーツク海沿岸約60kmとなっており、流氷の動きを,昼夜・天候の別なく監視する広域流氷観測レーダー網が構築されました。
写真-1 北海道大学低温科学研究所付属流氷研究施設
氷海展望塔オホーツクタワー
紋別海域における流氷観測は、アメダス(地域気象観測システム)への移行に伴い紋別測候所が閉鎖されたため、2008年より氷海展望塔において紋別市が独自に海氷観測を実施してきました(オホーツクプログラム構想促進事業:オホーツク・ガリンコタワー株式会社が継続受託)。 流氷量の観測資料は、2014年以降、紋別市が管理するドップラーレーダーを用いた解析を実施しています。また、ホームページにおいて公表することとしておりました。 「氷海展望塔オホーツクタワー」における海氷観測の手法については [ こちら ] 2020年、流氷研究国際都市という担当部署が消滅してしまいました。 オホーツクタワーは、氷海研究の拠点施設として、訪問する観光客に、紋別市の取り組みや最新の研究の成果をわかりやすく、映像展示や解説展示で紹介してきましたが、貴重な機材や展示と共に研究・観測展示が一切廃棄処分され、フリースペースになってしまいました。 観測資料についても市外の研究者が優先的に使用が許され、市民の利用は数年後になってしまうなど、故青田先生が目指した方向性とは、まったく異なる方向に進んでしまいました。 しかしながら、それらの方針を選択したのもまた、主導する紋別市役所であり、時代の流れなのかもしれません。
写真-2 氷海展望塔オホーツクタワー
もんべつ海の学校
変貌を遂げる環境の中、紋別海域における海氷観測の灯を消したくないという思いから、もんべつ海の学校は生まれました。 もう、紋別における海氷観測の歴史を知る人は少なくなってしまい、2022年シーズン以降、流氷公園(標高80m)において独自に海氷観測を実施することにしました。 2023年からは、海上保安庁海氷情報センターからの依頼を受けて実施しています。 気象庁は、2022年シーズンから、「流氷初日」および「流氷接岸初日」の目視観測のみ継続することを決定し実施しております。それに伴い、紋別市が発表する海氷情報も準じることになりました。 『もんべつ海の学校』では、引き続き独自に「流氷終日」「海明け」も観測を続け、ホームページにおいて発信を継続します。 「もんべつ海の学校」における海氷観測の手法については [ こちら ]
写真-3 紋別公園
参考文献)