04 海流

04-01 日本周辺の海流

 日本周辺の海流で有名なのは、「黒潮」と「親潮」ですよね。

 黒潮は、浮遊懸濁物質(海水中をただよう物質:マリンスノー)が少ないから、透明度が50mある時もあり、黒っぽく見えるから黒潮と言われています。

 実は、オホーツク海にも来ているって知ってましたか?
 厳密には、分岐した海流なのですが...。

 黒潮は、沖縄の北側海域で本州方面東岸へ向かう本流と九州西岸を北上する流れに分かれます。九州西岸を北上し、対馬海峡を越えると「対馬暖流」と名前を変えて日本海に入ります。対馬暖流は、幾本の流れに分かれますが、佐渡島を超えたあたりで、収束します。津軽海峡を通る「津軽暖流」として再び太平洋に戻ります。

 津軽海峡へ向かわず、北海道西岸を北上する「続流(ぞくりゅう)」が宗谷海峡を超えると、「宗谷暖流」と名前を変えてオホーツク海沿岸を沿うように流れます。

図-1 日本周辺の海流

■北海道周辺の海流

 海流を知ることは、海洋ゴミや漂流物、海洋の環境や生物の生息環境を考える際にとても重要となります。

 北海道は、日本海、オホーツク海、太平洋に囲まれています。そして、日本海側に対馬暖流(続流)、津軽暖流、宗谷暖流、親潮、東樺太海流などが知られています。

図-2 北海道周辺の海流

04-02 生物と海流

 黒潮を起源とする流れがオホーツク海までやってくることを知りましたね。

 実際、オホーツク海には、シイラ、マンボウ、イシダイなど南の海で元気な魚達がやってきます。

 これらの生物たちは、越冬できずに死んでしまう季節海遊の魚達です。

写真-1 季節海遊の魚類

04-03 コリオリの力

 台風は、どっち周りの渦か知ってますか?

 地球上で風や海流の動きを理解するのには「コリオリ力」を理解しなくてはなりません。

 これは見かけ上の力なんです。地球が回転しているために考慮する必要がある力なんです。
「慣性力(かんせいりょく)」なんて言われます。  

 本来、AさんがBさんに向かって投げたボールは、まっすぐ進みますから、P1の ようになります。しかし、土台が回転していた場合は、P2のようにAさんもBさんも移動しています。真上から見ているとボールはまっすぐ進み、Aさん、Bさんが回転しているのです。

 しかし、AさんやBさんから見ると、ボールが曲がったように見えています。ここで考えなければいけない「ボールを曲げる力」が慣性力です。

 図では、最初 の点と最後の点でベクトル分解していますが、地球のような巨大な回転体の場合、 時間スケールも大きいですから、慣性力を考えないといけないわけです。

図-1 慣性の力

04-04 季節によって変化する水塊

 オホーツク海・北海道沿岸の海洋環境は、1~3月の結氷期、4~6月の昇温期、7~9月の宗谷暖流の影響が大きい時期、10~12月の冷却期に分けられます。

 11月以降、沿岸に低塩分水層が接岸することが読み取れます。1月には塩分が31程度まで低下しています。北海道沿岸が凍りやすくなるのはこのためです。

図-1 水温と塩分の経時変化図

 オホーツク沿岸において、異なる水塊が存在することを知るためには、水温と塩分の挙動を見る必要があります。

 T-Sダイヤグラムは、密度の異なる水塊を可視化する際に用いられるグラフです。季節ごとに水塊が異なっていることがわかります。

 1~3月に低水温で塩分が低い水塊(緑)があり、これが「表層低塩分水」と言われる水塊で、沿岸が凍りやすい海に変化していることを示しています。

図-2 TSダイヤグラム

04-05 海は繋がっている

 宗谷暖流の大本は、黒潮までさかのぼります。

 黒潮から分岐して、対馬海峡を通過すると「対馬暖流」と名前を変えます。日本海に入った流れは、津軽海峡付近で再度合流し、ほとんどが津軽海峡を通過して太平洋に戻ります。

 北海道西岸では、「続流」として北上をする流れがあります。

 この流れが、宗谷海峡を超えると「宗谷暖流」と名前を変えます。

 サケの定置網にマンボウやシイラなどが入るのは、この海流に乗ってきてしまう季節海遊(死滅海遊)によるものです。

図-3 日本周辺の海流

04-06 水位差が駆動力

 宗谷暖流の駆動力は、日本海とオホーツク海の水位差だということがこれまでの研究でわかってきています。

 日本海側は、潮位差が少ないといわれていますので、オホーツク海側の潮位が変化することで宗谷暖流の流れが速くなったり緩やかになったりしているのです。流れを考える時、広い海域より、狭い海域を流れる流
れの方が速くなるため、宗谷海峡が狭くなっていることも重要です。

図-4 水位差による駆動イメージ

04-07 宗谷暖流

 宗谷暖流は、北海道沿岸に沿って流れる流れです。これは、いろいろな力のバランスで保たれています。

 ①日本海とオホーツク海の水位差で流れが生じます。
 ②宗谷海峡という狭い海峡を通過するため流速の初速度が速くなります。
 ③コリ オリの力で岸に向かう力を考慮しなければなりません。
 ④沿岸で水位上昇があります。

図-5 西岸境界流

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